「アトピー性皮膚炎」の治療
アトピー性皮膚炎の治療目標って何でしょうか?患者さんは、「できることならこの病気と完全に縁を切りたい」と思うでしょう。しかし残念ながらアトピー体質は生まれもったものだし、アトピー性皮膚炎を起こす遺伝子、もしくはそれを起こさない遺伝子はまだ特定されていません。仮にそれらの遺伝子が見つかったとしても遺伝子治療はまだまだ遠い先のことでしょう。
アトピー性皮膚炎の治療で大切なのは、粘り強くこの病気とつき合っていくということです。そうしていくうちに皮膚の炎症は徐々に治まり、必要最小限の薬で症状が軽い状態を維持することができるようになります。更に、長期的には、一般には慢性に経過するもの、適切な治療により症状がコントロールされた状態が続けば自然寛解も期待できます。つまり治ったも同然の生活が送ることができるということを、目標にすべきなのです。
では、適切な治療とはどういったものでしょうか。
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、炎症、痒みに対する薬物療法、スキンケア、原因や悪化要因の検索と対策の三本柱から成り立っています。炎症に対してはステロイド外用療法を主とし、痒みに対しては抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を補助療法として併用します。これと平行し、皮膚の生理学的機能異常(乾燥肌、敏感肌)に対して皮膚の清潔保持、保湿剤外用など含むスキンケアを行います。更に外的刺激、アレルゲン(アレルギーの原因となるもの)、ストレスなどの悪化因子を可能なかぎり除去し、生活を改善していきます。
これがアトピー性皮膚炎の治療の基本なのです。
日本皮膚科学会では3年前に治療のガイドラインを発表しています。
このガイドラインが作られた理由は、治療の大きな柱であるステロイド外用剤に対して根拠に乏しい不信感が社会一般に生じ、その結果ステロイド外用剤忌避の風潮が強まり必要かつ適切な治療を施せないままに重症化した患者さんが増加しているからなのです。