引っかくという行為

皮膚は人体の外側を覆う器官です。
鳥肌が立つ、手に汗を握る、冷や汗をかく、赤面するという表現があるように、皮膚は心と密接に関係し、常に心理状態の影響を受けて変化します。
疲労、ストレスにより、ニキビやアトピー性皮膚炎が悪化したり、じんましんが出没したりすることを経験された方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
嗜癖的掻破行動という言葉をご存じでしょうか。
二十年程前から言われているアトピー性皮膚炎における、引っかく行為の一つとされています。
緊張や怒りを感じた時に、かく行為が起こる場合があります。
かくことにより気がまきれたり、落ち着いたりして精神的な快感が得られます。
それが続くと無意識にかく行為が習慣化し、依存する場合があります。
かゆみを感じなくてもかかないとイライラして、なかなか止められない、制御しがたい状態になることがあるのです。
これを嗜癖的掻破行動と言います。
アトピー性皮膚炎で引っかく行為は症状を悪化させる大きな要因です。
もちろん乾燥した皮膚における、かゆみ神経の過敏さやアレルギーの関与といった理由でかゆみが生じ、かく行為につながるのは言うまでもありません。
しかしかく行為の中には「癖」になってしまっている部分もあるのです。
アトピー性皮膚炎のみならず、その他の皮膚病の中にも無意識にいじって症状をこじらせたという状況に遭遇することがあります。
傷が治ってきた時にできるかさぶたをついつい取ってしまう、ニキピをつぶしてしまう、などです。
癖を直す薬というものはなかなかありません。
治療する上で重要なのは本人がその行為を自覚することです。
現代医療はとかく薬に頼りがちです。
さまざまな薬が開発されたからこそ、われわれは病気に打ち勝つことができているのは確かです。
しかし心の安定があってこその薬です。皮膚のみならず、病気の治療において心の平穏を保つことは重要なことです。

2022年07月01日