疥癬について

みなさんは「疥癬」という名前の病気をご存じでしょうか?
疥癬は「ヒゼンダニ」というダニの一種が皮膚表層の角質層に寄生して起こる病気です。
強いかゆみを伴い、特に夜間は激しくなります。
かゆみのために睡眠が妨げられるほどです。
寄生したヒゼンダニのメスは次から次へと卵を産み、その数を増やしていきます。
密接な肌の接触によって人から人へと感染していきます。
疥癬の歴史は古く、古代ギリシャ・ローマ時代にその記録があります。
インドにおいては仏門に入る際、疥癬ではないことが条件になっていた時代もあります。
日本では大正六~七年に西日本を中心に疥癬が流行し、「大正瘡」と称された記録があります。
また第二次世界大戦後の昭和二十~二十一年にも大流行しています。
その後、疥癬は、なりを潜めていたかのように思われていましたが、昭和四十年代の高度経済成長期、海外渡航者が増加するに従い、再び現れ始めました。
昭和五十年代後半からは社会的なまん延をもたらし、現在に至っています。
疥癬になると、ほぼ全身にかゆみが出現し、赤く盛り上がった小さなプツプツ(丘疹)が出てきます。
発疹が出現する特徴的な場所は、手の指と指の間や手のひら、手首です。
また、男性では外陰部(陰嚢)に出現する少し大きめのプツプツ(結節)も特徴的です。
これらの場所はヒゼンダ二のメスが産卵する場所なのです。
そのほかに、水ぶくれやうみをもった小さなプツプツ、ヒゼンダニが移動するために生じる「疥癬トンネル」という線状の発疹も見られます。
なお、頭や顔に発疹が出現することはまれです。
病変部から皮膚を取り、ヒゼンダニそのものや虫卵を顕微鏡で確認できれば、疥癬の診断を確定できます。
治療は飲み薬や外用薬です。
大切なのはまず疥癬であることを確定させ、適切な治癒を受けることです。
さらに周囲への感染拡大を防ぐ対策を講じることです。
近年、高齢化が進み、介護を要する高齢者が増加しています。
病院や老人介護施設における疥癬の集団発生が問題になっています。
皮膚のかゆみが現れ、発疹が出現した場合、ひょっとしたら疥癬かもしれません。
自己判断で治療を開始する前に、皮膚科を受診し、診察を受けることをお勧めします。

2022年05月09日