食後の運動で・・・

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という、ちょっとややこしい
感じのする長い名前の病気をご存じでしょうか?これは、ある特定の食物
を食べた後に運動すると、じんましんなどのアレルギー症状が起こる病
気を言います。症状は時に重くなり、じんましんだけではなく、呼吸困難
に陥ったり、血圧が急激に下がったりといったショック症状が起きること
もあります。
 原因となる食物は穀物や魚介類、果物などさまざまですが、パンやめん
類などの小麦製品が最も多いのです。
 この病気が初めて起こる年齢は十‐二十代で、中学生‐高校生を対象と
した調査によると、有病率が約八千三百人に一人という結果が出ています。
 原因食物を食べただけでは症状が出ないので、患者さんの多くは食物
(食事)が原因だと気付かないことが多いようです。運動は激しい運動に
限らず、ただ歩くだけなどの軽い運動でも症状が誘発されることもありま
す。症状は食後一時間以内に出るケースが多いのですが、二時間以上にな
ることもあります。
 食後の運動という要素に加え、アルコールの摂取や疲労、ストレス、あ
る種の薬の服用などがかかわっていることも分かってきました。薬に関し
てはアスピリンの服用で症状が悪くなったとの報告が多いようです。
 どうしてこのようなことが起こるのかはまだ十分に解明されていません
が、患者さんの血液の中にはアレルギーの原因である「抗原」に対して反
応・抵抗する成分「抗体」が検出されます。運動などにより、消化管からよ
り多くの抗原が吸収されることが、重要な要素の一つであることが明らか
にされています。
 今のところ、根本的な治療は確立されておりません。原因となる食物が
判明した場合、極力その食物を食べないようにすること(できれば食べな
いようにする)と、食後三時間程度は運動を制限することで、かなりの割
合で症状がでないようにできます。実際症状が出てしまった場合には、飲
み薬や注射、ショック症状に対する処置などを行う必要があります。

2021年03月15日