「粉瘤」について

粉瘤(ふんりゅう)という病気をご存じでしょうか?
これは、日常よくある病気のひとつで、皮膚の表面が半球状に盛り上がり、さわると弾力のある皮下のしこりをさします。大きさは1㎝以下のものから、数㎝のものまで様々です。
顔や胸、背中によくでき、強く押すと、臭いのある、粥(かゆ)状の内容物が排出されます。成人の男性に多くみられる病気です。もちろん女性やお子様にもみられます。
この粉瘤ができる理由は、毛穴がふさがり、毛の通り道が「袋」のように腫れてくることによります。この「袋」の中には、皮脂(ひし)や角化(かっか)した表皮細胞(ひょうひさいぼう)がたくさんつまっていきます。このようにして粉瘤はつくられていくのです。
この粉瘤、放置しておいても差し支えないことが多いのですが、時に細菌感染を起こし、腫れあがり、激しい痛みを伴うことがあります。そうなると、常に膿を出し続けることもしばしばで、治りづらくなります。ですから、治療は炎症を起こす前に、原因となる「袋」を切って取ってしまうのが一番です。
ここで、余談ですが、皆さんもよくご存知と思います、昔話の「こぶとりじいさん」一説によると、おじいさんの「こぶ」はこの粉瘤だったのでは?と言われているのです。まっ、これは空想の話ですので、責任あることは言えません。
しかし何らかの題材を元に作られた話であると考えると、あながち間違っているとも言えないのではないでしょうか。さて「正直じいさん」の「こぶ」は話の中で、「いじわるじいさん」の頬に移動してしまいます。つまり「正直じいさん」の「こぶ」が消えてしまうわけです。実際に粉瘤が何もしなくても消えることは時としてみられる現象なのです。
粉瘤は日常診療において、遭遇する頻度の高い病気のひとつです。
決して悪性の「できもの」ではありませんが、先程言いましたように、化膿してこじれる場合もあります。
また、粉瘤だと思っていて、実は違うものだったということもありえます。
ですから、何か、気になるものがあれば、遠慮なく、病院を受診して正確な診断を受けて下さい。

2020年10月19日