「こどもの皮膚病」について 

私たちにとって皮膚は気にとめなければ、そこにあるのが当たり前の空気のような存在ではないでしょうか。
しかし皮膚は外部からの刺激から身を守る防御壁の役割を担ったり、汗を分泌して体温調節を行ったり、内臓で起こっている異常を映し出す鏡の役割を果たしたりと、様々な機能を持った生命にとって欠かすことの出来ない重要な臓器の一つです。
さて皮膚と一言で言っても、年齢によりその特徴には違いがあります。
今回は子供の時期の皮膚の特徴と、この時期にみられる皮膚病について少しお話します。
皮膚には、一面に穴があります。汗が出る穴(汗孔:カンコウと言います)と毛(硬い毛やうぶげ)の生えてくる穴(毛孔:モウコウと言います)です。実はこの穴の数は生まれてから一生変わることがなく、ずっと同じなのです。
成長とともに皮膚の面積は増えますがこれらの穴の数は変わりません。ということは、子供の皮膚には汗孔や毛孔が過密に存在していることになります。このことは、毛孔や汗孔が関わる皮膚トラブルが子供には起こりやすいことを示しています。
一方、皮膚の厚さは子供の頃の方が薄く、成長とともに厚くなっていきます。低年齢の時ほど皮膚が薄いため、外界からの色々な刺激の侵入により生じる皮膚疾患も子供の時の方が多いのです。また皮膚の表面は毛孔から分泌される皮脂(ヒシ)で覆われていますが、この量を子供と大人で比較すると、子供はとても少ないのです。
新生児期から生後2?3ヶ月頃までは、母体からのホルモンの影響などで皮脂を作る脂腺機能は活発ですが、それ以降の幼小児期になると機能は低下します。(思春期になると再びその活動は活発化します。)それにより子供の皮膚はカサカサと乾燥しやすいということになります。このことも外界からの色々な刺激に弱い皮膚の要因になっています。つまり子供の皮膚はかなりデリケートなものと言えるでしょう。
それでは具体的に子供の時期によくみられる皮膚病について、いくつか説明します。

脂漏性湿疹(シロウセイシッシン)
乳児期前半に好発します。頭頂部に始まることが多く、顔にもみられます。黄色っぽい色をした厚い鱗屑(リンセツ:かさぶた)で覆われ、紅斑(コウハン:赤み)と痒みを伴ってきます。

単純性粃糠疹(タンジュンセイヒコウシン)
幼児期から学童期の顔に好発する、自覚症状のない境界が不鮮明で円形?類円形のやや色が薄く抜けた斑です。所々に細かい鱗屑(白いカサカサ)が存在しています。

尋常性疣贅(ジンジョウセイユウゼイ)
ヒトパピローマウィルスによる「イボ」です。手足に多くみられ、表面がザラザラと硬くなっており、足の裏にできたものは、「ウオノメ」や「タコ」と間違われることがあります。

伝染性軟属腫(デンセンセイナンゾクシュ)
いわゆる「水イボ」です。プールで伝染することが多いようです。

伝染性膿痂疹(デンセンセイノウカシン)
いわゆる「とびひ」です。引っ掻き傷などに細菌(黄色ブドウ球菌や溶連菌など)が感染し起こります。夏に多い病気ですが、住環境の改善とともに、冬にも増加しています。

頭虱(アタマジラミ)
数年前から函館地区で保育園や幼稚園、小学校で集団発生しています。頭にシラミ、その虫卵を認めます。薬剤を使用し、きっちり治療すれば治ります。

接触皮膚炎(セッショクヒフエン)
いわゆる「カブレ」です。様々な原因があります。オムツをしている時期ですと、下腹部?股、太ももにかけて紅斑(コウハン:赤み)が出現します。但し、オムツの部分に生じる赤みで注意しないといけないのは、カンジダというカビで起こる病気があります。見た目が似ていますので、病院での確定診断が必要です。

まだまだ、様々な皮膚病がありますが、紙面の都合上、また別の機会にお話することとします。大切なことは自己判断をせず、病院での診察のもと、適切な治療を受けることです。
短い夏が終わり、これから冬に向かって気温や湿度が低下していくことでしょう。
皮膚の血管は収縮し、汗や皮脂も少なくなります。そうなると皮膚の表面はカサカサになります。これからの季節は乾燥から皮膚を守るような対策が必要です。
皮膚を清潔に保つことは必須ですが、入浴時の擦り過ぎは乾燥肌を助長します。優しく体を洗うようにして下さい。その後には保湿ローションなどを使用するといった保湿のためのケアが一段と重要になってきます。

2020年10月12日